パソコン設定・設置・トラブル対応
トリアージュ

メールで相談
業務提携依頼
業務提携依頼 お問い合わせ
パソコン操作を教えている人の写真

おまえ、ほんまにCEなのか?

2025.7.9

(10年以上昔のお話・・・)

──これはですね、あとからとある店長さんに言われたひと言なんですけどね。

今回のお話は、いつものような地元の店舗とは違いまして、
それなりに案件はいただいてるんですけど、うちが店に顔を出すことはあんまり無かった、そんなお店での出来事です。

店長さんと直接お話しする機会もほとんど無かったんですけど、ある日、急にその店長さんから僕の携帯に電話がかかってきましてね。

(……なんで番号ご存じなんやろ?)と不思議に思いながら出てみたら、

中西さん、ちょっとご相談したいことがありまして。

──で、出てきた内容がこちらです。

お客さまがスカイプを使いたいとおっしゃいましてね、
それで、パナソニックのスカイプ対応テレビを勢いで販売してしまったんですけど……

あとからよう聞いたら、インターネットの契約も何もされてなかったみたいでして。

ちょっと助けてもらえませんか。

──これはもう、「あるある」の世界ですよね。

うちはあくまで請負のCE(カスタマーエンジニア)なんですけど、
「とりあえず現地の様子だけでも見に行ってもらえませんか。費用は店で持ちますんで」と言われまして、
のどかな郊外の一軒家へ向かうことになったんです。


現地調査:モバイル回線は絶望的

現地に着いた瞬間、正直、わかりました。

これはモバイル回線では無理やな。

テレビは置いてあるし、スカイプ機能も入ってます。
でもネットに繋がってなければ、ただの大きい画面の箱です。

いったん店舗に電話して、パソコン担当の方に回線エリアを調べてもらったところ、
「一応、固定回線なら提供エリア内です」とのことでした。


「それ、売ったらあかんの?」

僕:「おたく、“〇〇ネット”っていう立派なサービスあるでしょ?それ売ったらええんちゃいますの?」

パソコン担当:「あっ…お客様にご説明しますんで、ご来店いただけますか?」

僕:「いやいや、それ手間ですよ。今ここで説明して、意思確認だけでもしたらあきません?」

……というのもですね、普段から店に顔を出すたびに、思うことがありまして。

プロバイダ説明員に捕まって、契約だの規約だの、延々としゃべってはるんですけど──

「私ら、冷蔵庫買いに来ただけやのに……」

そんな顔をしたご夫婦、ほんまによく見かけるんです。

『同時加入でお得!』に釣られて説明ブースに座ったら最後、
マニュアル棒読み、専門用語だらけのトーク。

ちょっと突っ込んだことを聞かれたら「確認してきます」で、30分戻ってこない。

子どもは泣き出すし、旦那さんは飽きてタバコを吸いに行く──

あれ、なんとかならんのかなと思うんです。

と、「伝説の回線説明員」(この話はまた今度します)
だった僕としては、そういう現場を見るたびにうずうずしてしまうんですよ。

書類の手続きはあとで店に行ってもらうとしても、
今ここで、“なんでインターネットが必要なのか”をちゃんと伝えるのは僕の役目やなと思ったんです。


バナナの叩き売り、炸裂。

そこから先は、もう止まりませんでした。

「さぁさぁ見てください!このスカイプ対応テレビ!」
「このままでは喋れません!喋らせるには“魔法の糸電話”が必要なんです!」
「その正体が、インターネット!今話題の〇〇ネットでございます!」

完全に、バナナの叩き売りスタイルです。

でも、それがご夫婦にめちゃくちゃウケたんです。

奥さん:「インターネットの説明で、こんなに笑ったの初めてやわ〜(笑)」

その場で「契約の意思」も確認できまして、
最後にこう言いました。

諸々の規約の説明は、店舗でしかできへんので、
そこだけちょっと我慢して聞いてあげてくださいね。


……数日後。

回線工事も無事に終わりまして、
スカイプの初期設定を済ませたその日。

大画面のテレビに、海外にいるお孫さんの顔が映った瞬間、
あのご夫婦は、子どもみたいにキャッキャッと笑ってはりました。

──ああ、こういうのがやりたかったんやな、と。

たった数分の通話でも、あの笑顔にはかなわへん。

「ただの設置屋」かもしれませんけど、
僕はあの日、ええ仕事をしたと思ってます。


そして、店長のひと言。

後日、そのご夫婦から話を聞かれたそうで、
店に顔を出したとき、店長がニヤニヤしながら僕を見てこう言わはったんです。

中西さん、あんたほんまにCE?
うちの売場に立ってくれへん?

──いやいや、僕は設置屋です。

でも、ちょっとだけ、うれしかったですわ。